


UMIUMA JOURNAL
時代の“0.5歩”先を行くアイデアで、新しいおいしさを。
今では当たり前のスライス済み商品の先駆け。
青森県八戸市に本社を置く株式会社ディメールは、1936年創業の水産加工会社・株式会社ダイマルの子会社として2005年に設立。その後、2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた株式会社ダイマルと、丸竹八戸水産株式会社、株式会社ディメールの3社が、復興・再建を果たすべく、2012年5月に経営統合し、新生ディメールとして新たな一歩を踏み出しました。
震災でダイマルの工場は8mの津波に襲われ、ほぼ壊滅状態に。同じく工場機器の損壊など被害を受けた丸竹八戸水産と、稼働可能な工場と機械設備を利用し合う共同操業を震災の1ヶ月後から開始。その後、3社で経営統合を進めました。

震災以前、ロングセラーとして主力の商品だったのが、しめさば半身の関連商品。当時、しめさばは食べるときに自分で切るのが当たり前でした。しかし、ディメールでは市場のニーズの変化に合わせ、震災前から開発に着手していたスライス済みの「切れてるしめさば」を2012年に発売。「特にスーパーなどの量販店、大手コンビニエンスストアなどから、『こういう商品を待っていた!』と好評を得ました」と取締役社長の小軽米(こがるまい)道善さんは振り返ります。
2014年には、従来の主力商品「しめさば半身」シリーズの売上を「切れてるしめさば」が逆転。2016年春には、「切れてる梅酢しめさば」を発売し、第27回全国水産加工品総合品質審査会で「農林水産大臣賞」を受賞。小軽米さんは「簡便な商品が求められる時代であることをより強く感じましたね」と当時の思いを語りました。

原料難の課題を逆手にとってヒット作に。
近年、同社は他社同様、水揚げされるさばの小型化や漁獲量の減少といった原料難に直面しています。しかし、同社では柔軟なアイデアで、この課題を逆手にとった商品を開発しました。「原料となる魚の確保や消費者のニーズ、我々の商品づくりなど、水産業はさまざまな変化の過渡期にあります」と小軽米さん。「『大きいしめさばはおいしいけれど、食べきれない』『おいしいさばをちょっとでいいから手軽に食べれるものが欲しい』というお客様からの声を多く聞くようになりました。それならばと小型化した原料を利用し、従来のサイズから小さくスライスした商品を開発して、大手コンビニを中心に販売しました」。
こうして2016年2月に「しめさばスライスハーフ」、2018年2月に「梅酢しめさばスライスハーフ」、さらに同年6月には「にしんの甘酢漬けスライスハーフ」を発売。従来のサイズの商品に比べて高い売上を誇る人気商品となりました。また、新型コロナウイルスの沈静化以降は、外食向けの新商品開発にも力を入れていると言います。

既存のアイデアにとらわれない商品を展開しているディメール。小軽米さんは新商品開発の難しさに言及しながら「時代の0.5歩先を行くイメージで、定番商品に新しさを加えていきたい」と話します。「水産加工品は新しい味や食感に手を伸ばしてもらいにくい傾向にあります。あまり時代の先を行きすぎず、例えば我々の強みであるさばと青森の野菜をコラボレーションするなど、今まで培ってきたものを活かしながら、新しいおいしさを届けていきたいですね」。
さらに今後について「水産加工会社というよりも食品メーカーとして、柔軟な発想で商品づくりを展開していきたい」と語る小軽米さん。これからも固定観念にとらわれないアイデアで、社会のニーズに応える新しい商品づくりを進めていきます。

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