
UMIUMA JOURNAL
相馬の海から、おいしさと人の輪を広げたい。
飲食店から始まった、水産加工への挑戦。
福島県相馬市で水揚げされる旬の魚介を使い、さまざまな水産加工商品を展開しているループ食品。その加工場は市場から車でわずか1分ほど。水揚げされた魚をすぐに仕入れられる立地に加え、急速冷凍の技術も取り入れ、鮮度とおいしさを大切にした商品づくりを行っています。
「もともと水産加工の経験はなくて。飲食店を経営し、そこで料理を作っていたんです」。そう話すのは、ループ食品の代表取締役を務める森拓也さん。森さんは東日本大震災翌年の2012年に相馬市内に居酒屋を開業、その後2018年に飲食店「武玄(MUGEN)」をオープン。地元の鮮魚や野菜を味わえるお店として親しまれています。
「常磐ものは、当初から人気のメニューです。しかし、2019年にそれまで魚を仕入れてくれていた方が病気になってしまいました。そこで自ら市場へ足を運ぶようになったんです」。
市場へ足繁く通うなか、やがて森さんは売参権を取得。自分の目で魚を選び、仕入れ、調理するようになりました。
その頃、相馬市では相馬沖で水揚げされる天然トラフグ「福とら」のブランド化に力を入れていました。そうした動きに森さんは「一緒に地域を盛り上げたい」とふぐの調理資格を取得し、加工品を手がけるように。飲食店の経営に加え、本格的に水産加工の道を歩み始めました。
「当初は1つ、2つの商品ならつくれても、それが100個、200個となると、同じようにはいきませんでした。たとえば干物なら塩水に漬ける時間や水分量、乾燥具合など、少しの違いが仕上がりを大きく左右してしまうことを知りました」と振り返る森さん。試行錯誤を重ねながら、少しずつ加工技術を身につけてきました。
また魚の目利きも、経験を重ねるなかで磨いてきました。漁師や市場の関係者から話を聞き、自ら選んだ魚を加工して、身の状態などを確かめる。その繰り返しによって、魚を見る目を養ってきたといいます。
「具体的に教えてもらえるわけではないんですが、何人かに聞いていくうちに『ここがポイントかな』と見るべきところが定まってきて。それで実際に魚を下ろしてみて、予想通りであれば『正解だったんだ!』と自信がつきました」
一方、飲食店で培った調理の経験は商品開発に活かされています。その日水揚げされた魚を見ながら「どうすればおいしく食べてもらえるか」を考え、最近ではホヤの塩辛など、新しい商品にも積極的に挑戦しています。
相馬のおいしさを地元の食卓から世界へ。
森さんが水産加工を通して実現したいことの一つが、相馬で獲れた魚を地元の人たちにもっと食べてもらえる環境をつくることです。
「良質な魚は県外へ出荷されることも多くあります。ただ、地元の人たちにこそ、おいしい常磐ものを食べてもらって、その魅力を知ってもらいたいんです」。
そう思う背景には、相馬で生まれ育った森さん自身の経験があります。東日本大震災当時、森さんは市内で暮らしていましたが、家族の実家が津波で被災。原発事故の影響もあり、山形や宮城など各地を転々とした時期もありました。
その後、2018年。震災後初めての相馬の海開きで、森さんはイベントの立ち上げに携わりました。「当時は、一度も地元の海に入ったことがない子どもたちもいました」。そこで森さんは海へ親しんでもらうきっかけになればと、現在では恒例となっている花火大会を開催。こうした経験のなかで、森さんは「相馬の海が地域を盛り上げる大きな力になる」と感じています。
「相馬には海産物という大きな魅力があります。それをきっかけに人を呼び、旅館や観光スポットなどもつなげながら、地域を盛り上げていきたいですね」。
そして現在、その取り組みは海外にも広がろうとしています。ループ食品は、相馬市やJETROなどが連携し、相馬産のトラフグをドバイへ輸出するプロジェクトに参加しています。
「僕たちは加工がメインですが、地域には鮮魚を扱う事業者もたくさんいます。加工品とともに新鮮な常磐ものを届けたり、それぞれが協力しながら、相馬の可能性を広げていきたいですね」。
飲食店で使う魚を求めて市場へ通い始めたことから、水産加工の世界へ。地域の新たな名物をつくり、その魅力を海外へ届けようと活動している森さん。その挑戦は、相馬の海と人をつなぎながら、さらに大きな輪を広げようとしています。
COMPANY INFO 今回のつくり手さんの会社
株式会社ループ食品
- 住所
- 〒976-0022
福島県相馬市尾浜追川186-5 - 取扱製品
- 天然とらふぐ(身欠・てっさ・てっちり・ヒレ酒用)、ボイルほっき貝(お刺身用)、ボイル蛸(カット)、各種鮮魚ロイン、あんこう(ドレス・唐揚げ用・共和え)、目光(唐揚げ用)、真イカ、つぶ貝、干物、OEMほか