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有限会社マルイチ仙台屋商店
2025.12.23

鮮度が命。常磐ものの“しらす”を1秒でも早く食卓へ。

北茨城で育まれる、上質な“しらす”の魅力。

茨城県は古くからしらす漁が盛んな土地として知られています。中でも北茨城市で獲れるしらすは「常磐もの」と呼ばれ、その味と品質は全国で高く評価されてきました。その水揚げ拠点の一つ・大津港から車で5分ほどの場所に本社工場を構えるのが、有限会社マルイチ仙台屋商店です。

同社の歴史は、創業者が明治時代に底引き網漁やカツオ漁を行う漁師として商いを始めたことにさかのぼります。その後、1980年頃からは加工業に転換したことはわかっていますが、「社名の由来なども含め、正確な情報は残っていないんです」と代表取締役の鈴木均一さんは話します。「江戸時代の天保の頃(1830年〜1845年)には先祖が商売をしていたようなのですが、記録や資料が戦時中に消失してしまったので詳細はわかりません」。

現在、マルイチ仙台屋商店では、しらすの加工商品を中心に取り扱っています。商品づくりで何よりも大切にしているのが、鮮度です。「しらすは“弱い魚”と書くいわし(鰯)の稚魚なので、とても繊細です。また漢字で“白子”と書く通り、白く透明な身であることが鮮度の証だと考えています。そういった質のいいものだけを仕入れ、水揚げ後は1秒でも早く加工することで、しらす本来の風味や食感を保っています」と鈴木さん。

同社では大津港で朝獲れたしらすを午前中に加工するなど、迅速な加工と一貫した温度管理で鮮度を徹底。受け継がれてきた天日干しや釜揚げに仕上げています。こうして作られるしらすはプリプリとした食感と、ほのかな甘みが楽しめる商品になります。

これからも地域の水産業を守りつづける。

2011年の東日本大震災では大津港に高さ5mの津波が押し寄せ、漁船や設備が大きな被害を受けました。鈴木さんは「弊社の建物にもヒビが入ったり、設備面で被害が出ました。ただ、それよりもしらす漁が2年間休漁になったことが大変でした」と振り返ります。大津港では2012年に試験的にしらす漁を再開し、2013年5月から本格操業を実施。鈴木さんは「福島の原発事故の風評被害にも悩まされましたし、しらすは丸ごと食べる魚なので、特に安全管理を徹底しています」と語りました。

同社では専用の設備によって雑菌の繁殖を防ぎ、製品の安全性を高めるとともに、 2021年には日本発の水産エコラベル認証制度である「マリン・エコラベル・ジャパン(MEL)」も取得。トレーサビリティの確保や品質管理を一層徹底しています。

2023年には本社工場がある敷地内に直売所をオープンしました。ここではしらすをはじめ、同社の商品や旬の魚介などをお得に購入することができます。「近頃は地元の方でも、この地域で獲れた魚を食べる機会が減っているので、ぜひおいしさを知ってもらいたいと思っています。お客さま一人ひとりと直接つながれる場所になっているのも、うれしいですね」と鈴木さんは話しました。

また近年は、地域の旅館やホテルとの取引など、これまでになかった取り組みにもチャレンジしています。こうした挑戦の背景には、100年以上にわたってこの地で水産業に携わってきた老舗としての、地域に対する強い思いがあります。最後に鈴木さんは、次のように語りました。

「我々は長年、地元とともに歩んできたので、この地域の水産業や魚食文化をこれからも守っていきたいと思っています。そのために地元の漁師と協力し合い獲れたしらすを商品化して販売することで地域漁業の安定化と持続的な発展を支えながら、多くの人にしらすをはじめ、常磐ものの魚介のおいしさを届けていきたいですね」。

COMPANY INFO 今回のつくり手さんの会社

有限会社マルイチ仙台屋商店

住所
〒319-1704
茨城県北茨城市大津町北町3355-1
取扱製品
生しらす、釜揚げしらす ほか