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末永海産株式会社
2025.09.19

三陸の海と地元漁師への思いを、商品に込めて。

“奥の海”万石浦で育まれるもの。

宮城県の東部・牡鹿半島の付け根に位置し、石巻市と女川町にまたがる万石浦。古くから「奥の海」と呼ばれる景勝地として知られ、淡水と海水が混じり合う湾内では牡蠣などの養殖が盛んです。

そのすぐそばに本社工場を構えているのが、牡蠣や帆立、ホヤ、わかめなどの加工・販売を行っている末永海産です。

「現在、会長である父が1975年に塩蔵わかめなどの行商として創業し、1986年に会社を設立しました」。そう説明してくれたのは、専務取締役の末永康也さん。末永家は代々、この地で牡蠣やわかめの養殖を行ってきた漁師の家系。創業者である勘二さんは漁師ではなく加工業者となりましたが、立場が変わっても海や漁師への思い入れは変わりませんでした。

そして、その思いは今も受け継がれています。それを表すエピソードのひとつが、東日本大震災の後、人手不足で頭を抱えていた牡蠣生産者との協業体制を構築したこと。震災で漁師の数が減り、さらに漁師の多くが浜の近くから内陸へ移住したため、以前より作業時間が限られてしまうことに。その結果、従来のように漁師がむき身やボイルを施した状態で出荷することが難しくなったのです。そこで末永海産ではその仕事を肩代わりするため、牡蠣の殻むきをはじめとする一次加工に取り組むことにしました。

「私たちの仕事は漁師さんあってのもの。もともと漁師の家系ということもあり、地元の漁師さんに寄り添って事業を行うことを大切にしてきました。もちろん、これからも良い信頼関係を築いていければと思っています」と康也さんは話しました。

会社や地域の未来を見据えた挑戦。

震災では会社自体も大きな被害を受けました。末永海産の本社工場があるのは海抜ゼロ地帯。その上、地震で地盤が沈下したため震災の後しばらくは、すぐ裏手にある堀から毎日水があふれ出て、一面が水浸しに。その結果、本社工場の土台がやられ、建て直さざるを得ませんでした。

末永海産は2014年に新工場を竣工。それまでは牡蠣のむき身やわかめなどをリパックして出荷するというシンプルな加工がメインでしたが、このままでは限界があると感じ、震災以前から構想のあった高付加価値商品の開発に注力することにしました。

そうして生まれたのが「牡蠣の潮煮(うしおに)」です。潮煮とは、獲れたての魚貝類を炭火であぶり、あふれ出る旨味エキス“潮”ごと味わう調理法のこと。「漁師が『一番うまい!』という食べ方で、この辺りでは昔から当たり前のように食べていましたね」と康也さん。塩や水さえも使わずに、牡蠣から出る”潮”のみで煮込んだという商品で、2015年には第26回全国水産加工品総合品質審査会で農林水産大臣賞を受賞しました。

「商品開発の際、よく社内では素材の味わいを活かすために『何も足さない 何も引かない』と言っているのですが、まさにその通りの商品だと思います。素材から出る旨味だけで、十分な味付けになるんですよ」。

また、その他にも宮城県亘理町にある老舗の和食レストラン「田園」とコラボレーションした「至極の一杯」シリーズなど、新しい商品づくりにも挑戦しています。「宮城だけでもたくさんの種類の魚介類がいます。アイデア次第で色んなかたちになる可能性を持っているので、従来のイメージにとらわれず新しい商品づくりにチャレンジしていきたいと思っています」と康也さんは意気込みます。

同社の挑戦する姿勢は、地域の水産加工会社にも広がっています。国内のほかの地域同様、人手不足や原料難といった課題を抱える石巻の水産加工業ですが、近年では若手経営者が連携し、さまざまな取り組みを展開しています。

「若手の経営者層で集まって情報共有や意見交換を行っています。また、人材募集や海外での商談、新商品の開発などを協力することも多くなっていますね。みんな年齢も近く明るい雰囲気で、地元の水産加工業を盛り上げていこうと前を向いています」。

そう取り組みを説明してくれた康也さん。すべてはこの海の恵みを守っていくための取り組みです。「震災の時、津波で原料が流され、収穫を再開できるまでの間、ほかの産地の原料で商品開発を行いました。各産地にそれぞれの良さがある中、あらためて三陸ものの素晴らしさに気付かされて。その海や原料を守っていくためにも、地元の水産加工業者や漁師と手を合わせて進んでいければと思っています」。

COMPANY INFO 今回のつくり手さんの会社

末永海産株式会社

住所
〒981-0211
宮城県石巻市塩富町2-5-73
取扱製品
牡蠣の潮煮、炙り牡蠣、一年子牡蠣(生食用)等の牡蠣加工品、春告げわかめ、フレッシュ、わかめ、至高わかめ等のわかめ加工品、海鞘の加工品、ほたての加工品 ほか