


UMIUMA JOURNAL
女性らしい視点や発想力を活かして、八戸の海の恵みを食卓へ。
八戸一筋。イカの“箱入り娘”として。
八戸港に水揚げされるスルメイカを中心に、原料の仕入れから加工、製品化までを一貫して手掛けている、青森県八戸市の加工会社・五戸水産株式会社。その事務所や工場からは、同社のモットー『元気です!五戸水産 一品入魂』を体現するかのように、女性たちの明るい声が聞こえてきます。
水産加工業としては珍しく、従業員の大半が女性だという同社を牽引するのは、代表取締役の五戸睦子さん。両親が営む会社の手伝いとして5歳頃には電話番などを担当していたと言います。「母も働いていたので、2歳頃には作業用の箱の中にイカと一緒に入れられていたみたいです。まさに箱入り娘ですね(笑)」。

中学生の頃には帳簿付けまで任せられるほどになった五戸さんは、高校卒業後、会計事務所で物流や経理などを学んだ後、20歳で五戸水産へ入社。お父様のサポートを受けながら男性ばかりの八戸魚市場の競りに参加するなど、さまざまなノウハウを吸収する日々を送りました。
「30歳そこそこで初めてせりに参加した私から見れば、50歳を超える人はみんな大御所。そんな人たちに囲まれる中で大声を張り上げないといけない競りが、最初はとても苦手でした」と五戸さん。私が買い値を叫んでも競り人まで声が届かないので、父は私のために競り人に一番近い場所を確保してくれました。ただ、いつまでも父に頼ってばかりはいられないので、工場から魚市場に向かう車内で発声練習をして。『アーイ!ろっぴゃく~!』とハンドルを握りながら甲高い声を上げていました(笑)」。

また、五戸さんは商品開発にも積極的に挑戦。「私の入社当時は一次加工品しか作っていませんでしたが、煮物・焼物など二次加工品の製造に挑戦しました」。その際に大きな力となったのが、女性従業員たちのアイデアや技術力でした。「私もそうですが、主婦として家庭で料理を作る人が多かったんです。その視点を活かし、簡単に調理できておいしく、しっかりおかずとなるものを皆で考えました。昼にお弁当を食べながら話したアイデアがヒット商品に繋がったこともあります」。
失敗を恐れずに、新しい商品づくりにチャレンジ。

2011年の東日本大震災では、五戸水産の工場にも津波が押し寄せ、トラックやフォークリフト、井戸のモーターなどがすべて使えなくなってしまいましたが、周りの工場ほどの被害は出ませんでした。「1960年のチリ地震の津波被害に遭った後に、祖父が工場の土地を少し高くしていたからなんです」と五戸さん。五戸水産の工場1階は目の前の道路よりも70~80センチ高くなっているため、浸水は50センチ程度で済みました。また、無事に残った機材や原料も多く、五戸水産は焼きイカ700パックを避難所に寄付しました。

近年ではイカの高騰に悩まされているという同社ですが、イカ以外の原料を使った商品を作っています。五戸さんは「漁師さんが頑張って獲ってくれた魚なら、どんなものでも捨てることなく活かしたくて。流通に乗らないものでもおいしい魚介ばかりなので、ぜひ全国の人たちに食べてもらいたいですね。」と話し、製品化しにくいサイズの水産物の取り扱いにも積極的です。
「もう何屋なんだかわからないですよね」と笑う、五戸さん。毎日のように試作を繰り返し、まだまだ新しい商品のアイデアがあると話しました。「展示会には一品でも新商品を持って行くようにしています。そうすると『こういうものも作れない?』と声を掛けてもらえたりするんです。そう言われたら、すぐに挑戦しています。これからも従業員の皆と、失敗を恐れずにチャレンジしていきたいですね!」と最後まで元気に意気込みを語ってくれました。
COMPANY INFO 今回のつくり手さんの会社

五戸水産株式会社
- 住所
- 〒031-0822
青森県八戸市白銀町三島下24-103 - 取扱製品
- 鮭とば、いか・キンメダイ・さばの一夜干し、いか佃煮風のいかあられ、いかそぼろ肉みそ、イカとタラコのおかずラー油 ほか