2026-03-25
千葉を再発見:伝統の海の幸と海辺の風景

東京のすぐそばにある、静かな海
千葉は成田空港や東京ディズニーランドのイメージが強いかもしれませんが、少し足を伸ばしてみると、険しい崖が続く海岸線の風景や、小さな町々に受け継がれてきた食文化の魅力に出会うことができます。
千葉の漁師町では、カツオとキンメダイを中心とした食文化が育まれており、その伝統は勝浦などで現在も息づいています。房総半島には、開けた海の景色や穏やかな散策路が続き、地平線が手に届きそうに感じられるような眺望スポットも点在しています。
日帰り旅行や週末の小旅行にぴったりな千葉。旅のはじまりは、勝浦から。都心からすぐ近くにありながら、驚くほど穏やかで味わい深い、千葉の魅力を探してみましょう。
サラヤ保崎商店から始める海の幸の旅
千葉の太平洋沿岸で海の恵みを味わいたい人にとって、サラヤ保崎商店はぜひ覚えておきたい名前です。港町・勝浦で100年以上の歴史を持つこの老舗の水産会社は、地域とともに歩み、漁法や味覚の変化に合わせて、その技を磨いてきました。現在では、日々水揚げされる魚を丁寧に加工し、海の旨味を存分に引き出したこだわりの商品づくりで知られています。
江戸時代から続く伝統
サラヤ保崎商店の物語は、1855年(江戸時代末期の安政2年)、初代保崎次郎松が勝浦に生まれたことに始まります。次郎松は漁業に打ち込むだけでなく、町の発展にも尽力し、地域の行政に携わるとともに、銀行(信用組合)や漁業協同組合の設立・運営にも関わりました。この基盤を引き継ぎ、二代目の保崎治郎松が勝浦港に水揚げされた魚を加工することを目的とした「保崎治郎松商店」を創業。こうして始まった地元の加工店は、世代を重ねるなかで発展し、現在のサラヤ保崎商店へと受け継がれています。
一つひとつの工程に込められた職人の技と地元の味
サラヤ保崎商店の評判を支えているのが、カツオやキンメダイをはじめ、勝浦港で水揚げされる旬の魚など、一尾一尾の持ち味を最大限に引き出す、丁寧な加工の姿勢です。看板商品である「カツオのたたき」は、魚が水揚げされた瞬間から加工が始まります。魚はすぐに施設へ運ばれ、最高の鮮度のまま焼き上げられます。海から加工までの時間を最小限に抑えることで、市場品とは一線を画す、澄んだ旨みと引き締まったたたきに仕上がります。
また、カツオ節にも、丁寧な職人の技が光ります。使用するのは、魚に負担をかけない伝統的な一本釣りで獲られたカツオのみ。その後、氷水タンクに入れられることで鮮度が保たれ、身の品質を保つ活け締め(品質保持の工程)と同等の効果が得られます。氷水でゆっくり熟成させることで、旨味のもとであるイノシン酸が高濃度に蓄積され、おいしくて香り高いカツオ節に仕上がります。おにぎりや豆腐、おひたしはもちろん、クリームチーズと合わせれば手軽で旨味豊かな前菜としても楽しめます。
サラヤ保崎商店が取り扱う魚の中で、主役となるのはやはりキンメダイです。柔らかく濃厚、それでいて自然な甘みが特徴で、栄養豊かな勝浦の海で水揚げされるキンメダイは、この地域の海産物の上質さを象徴しています。また、同社は伝統を守るだけでなく、新しい商品づくりにも挑戦しています。カツオやマカジキを使ったアヒージョや、ハワイでは高級魚として扱われ、現在では千葉県内の学校給食にも登場しているマヒマヒ(シイラ)の揚げ物などを提供しています。こうした商品には、魚を余すことなく活用し、大胆なアイデアで新しい形に挑戦しながら、伝統の味わいを次の世代へ伝えていこうとする、サラヤ保崎商店の理念が表れています。
数ある商品の中でも、特に人気なのはマグロやキンメダイの商品、そして冷蔵の必要がない軽加工のカツオの商品です。持ち運びもしやすく、お土産にもぴったりです。
勝浦から新鮮な海の幸をお届け
こうした味わいを実際に体験したい方は、サラヤ保崎商店(千葉県勝浦市浜勝浦93番地 )の店舗へ。東京からJR外房線で安房鴨川方面行きに乗り、最寄り駅の勝浦駅で下車すると便利です。そこから店舗まではタクシーで5〜10分、または徒歩で約20〜25分です。車で向かう場合は、館山自動車道や沿岸道路を利用でき、近くに駐車場もあります。勝浦市内の路線バスでもアクセス可能です。訪問の際には、事前に営業時間を確認か、店舗へ問い合わせることをおすすめします。
本店では、多彩な商品が並べられ、できたての商品を直接購入することもできます。また、市内の提携する土産店でも取り扱われており、勝浦駅前の売店でも購入できます。遠方から購入したい場合は、公式オンラインショップでも人気商品を多数取り扱っています。
サラヤ保崎商店は、勝浦や周辺地域のコミュニティとの結び付きも強く、キッチンカーで地元イベントにも積極的に参加しています。キッチンカーでは、自社の素材を使った刺身や季節の海産料理が好評です。春や夏の祭り、市原市の地域イベント、そして毎年開催される「かつうらビッグひな祭り」などにも出店しており、初ガツオやキンメダイなどの旬の味覚は、来場者のおおきな楽しみの一つとなっています。
鵜原海岸と八幡岬公園を散策して海岸の魅力を体感
サラヤ保崎商店で勝浦の海の味覚を楽しんだ後は、この地域の豊かな海の文化を形作ってきた風景にも目を向けてみましょう。市内の漁港からほんの少し足を伸ばせば、千葉でも屈指の美しい海岸景観が広がっています。切り立つ断崖や大きく開けた海の眺めは、房総半島の魅力を存分に感じさせてくれます。
房総を象徴する海の名所・鵜原海岸
そびえ立つ断崖と、水際に立つ印象的な白い鳥居で知られる鵜原海岸は、房総半島でも特に風光明媚な写真映えするスポットのひとつです。穏やかな海岸と大きく開けた水平線が広がり、海沿いの散策や静かなひとときを過ごすのにもぴったり。荒々しい岩肌とやさしく打ち寄せる波のコントラストが、まるで絵はがきのような美しい景観を生み出しています。
鵜原海岸へは、JR外房線の鵜原駅から徒歩で8~10分ほど。海辺に立つ鳥居が分かりやすい目印です。海岸はサーフィンスポットとしても人気で、天気の良い日にはサーファーや海水浴客でにぎわいます。
太平洋を一望できる八幡岬公園
かつて勝浦城があった場所に広がる八幡岬公園は、高さ約40メートルの断崖と太平洋を一望できる雄大な景色で知られています。約4,700㎡の広々とした園内には遊歩道や芝生、ベンチ、遊具スペースが整備されており、家族連れや散策にも最適。トイレや無料駐車場も完備されており、入場料はかかりません。園内には武士時代の伝説にまつわる記念碑や像があり、展望台からは地域でも屈指の美しさを誇る日の出や日の入りの景色を楽しめます。また、岬が海へと突き出し、周囲に街の灯りが少ないことから、満点の星や満月の夜景を楽しめる場所としても親しまれています。夜になると、昼間とはまた異なる美しい海岸の姿を見せてくれます。
公園へは勝浦駅から車またはタクシーでアクセスでき、園内には展望台へと案内する標識も設置されています。澄んだ水平線を望める朝の時間帯や、断崖と海が黄金色に輝く夕暮れ時の訪問が特におすすめです。勝浦駅から徒歩約30分かかるため、タクシーや車で移動しましょう。
edén RESTAURANT & SPA で癒しとくつろぎのひとときを
八幡岬公園で広がる海の景色を堪能した後は、ゆったりと過ごしながら勝浦の海岸の魅力を味わえるスポットへ足を運んでみましょう。岬から車でほど近く、また勝浦駅からは電車で鵜原駅まで移動し、そこから徒歩15分ほど。 edén RESTAURANT & SPAで は、断崖や歴史ある景観とは対照的な、洗練されたモダンな空間が広がるリトリートを楽しめます。
レストランでは、海岸の味わいと現代的な感性を融合させた、洗練された食体験を楽しめます。メニューには、パエリアのコースをはじめ、魚のフィデウア(パスタのパエリア)、房総の鮮魚を使ったタパスなども揃っています。デザートも魅力的で、バスクチーズケーキや温かいりんごのedénパイ、鴨川レモンのソルベなどが用意されています。開放感のある店内には、オープンキッチンがあり、大きな窓の向こうに海を望む空間は、ゆったりとしたランチや午後の食事を楽しむのにぴったりです。
ダイニングに加え、edén のスパとサウナ施設は、勝浦のゆったりとした時間に身を委ねながら、心身を整えるのに最適な空間です。併設されたスパでは、食事のひとときとはまた違った落ち着いた時間を過ごすことができ、露天風呂や室内サウナを利用できます。利用時間は、1時間(平日 ¥2,000 / 週末 ¥2,400)、2時間(¥3,000 / ¥4,000)、3時間(¥4,000 / ¥5,000)から選ぶことができ、いずれもスケジュールに合わせて気軽に利用できます。
edén RESTAURANT & SPA は毎日営業しており、レストランは11:00〜18:00、スパは10:00〜19:00まで利用できます。夏季期間(7月18日〜9月27日)は営業時間が延長され、レストランは11:00〜19:00、スパは10:00〜21:00まで営業しています。ランチの後や午後の観光の合間、あるいはディナーを楽しみたいときなど、さまざまなタイミングで便利に利用できます。帰る前は、勝浦の特産品やお土産を揃えたショップエリアものぞいてみてください。
千葉・勝浦を訪れるべき理由
勝浦市では、朝から晩まで時間の流れにあわせて、さまざまな体験を楽しむことができます。まず午前中は、港町の味覚から。老舗の水産店を訪れ、百年を超える歴史の中で受け継がれてきた技に触れながら、新鮮な海の幸を味わいます。やがて日が高くなると、旅の舞台は海岸へ。鵜原海岸や八幡岬公園、遊歩道から見える房総のダイナミックな海の景色が、午後の時間をゆったりとしたものにしてくれます。夕方には、これまでとは異なる落ち着いた時間を楽しめるedén RESTAURANT & SPA へ。おいしい食事と温かなサウナでくつろぎながら、穏やかな時間の中で一日を締めくくることができます。伝統、自然、そして現代的なリラクゼーション。勝浦は、そんな多彩な魅力をあわせ持つ旅先です。
勝浦は、千葉が魅力的な海辺の県であることを示す一例にすぎません。東京から2時間以内の距離にありながら、新鮮な海の幸、美しい散策路、歴史ある眺望スポット、そして穏やかな海岸がそろい、地域の魅力を気軽に楽しめます。勝浦をはじめとする千葉の海岸は、心をほどき、ゆったりと整えてくれる場所です。その穏やかな余韻は、街へ戻ったあとも、静かに長く心に残り続けます。