2026-03-11
石巻の海の恵みに浸る旅へ

サバ、おでん、そして宮城の変化
東に太平洋が広がり、西には日本最長の山脈である奥羽山脈が連なる宮城県には、歴史ある名所や美しい自然景観、ユニークな文化体験など、都会の喧騒から離れてゆったりとした時間を過ごせるスポットがあふれています。
宮城県北東部に位置する石巻市は、石巻湾と北上山地に囲まれた大きな港町です。ここでは、美しい海岸線の眺めや極上の海の幸、そして青森県へと続く三陸復興国立公園の豊かな自然が、訪れる人を迎えてくれます。
2011年の東日本大震災による津波と福島第一原子力発電所の事故が、福島県に与えた影響については多くの人が知っていることでしょう。その津波の被害で、最も多くの犠牲者が出たのが石巻市でした。津波は約73km3にわたり浸水し、数千の家屋が倒壊しました。それでも石巻の不屈の精神は震災から10年以上経った現在まで息づいており、今では新鮮な海の幸と壮大な景観を楽しめる絶好の観光地として再び注目されています。
さあ、石巻が誇る魅力を探しに出かけましょう。
山徳平塚水産:石巻の恵みを届ける
1931年創業の山徳平塚水産は、90年以上にわたり石巻の水産業を支えてきました。栄養豊富な海流に恵まれ、世界有数の好漁場として知られる三陸・金華山沖を拠点に、地元企業とのコラボレーションやものづくりの精神を通じて、社会に喜びを届けるという使命が受け継がれています。
もともとは鰹節や練り製品の加工を専門としていた山徳平塚水産ですが、漁業や大豆たんぱく加工、食品技術の改革も展開してきました。「伝統は守るべからず創るべし」というモットーのもと、「バーチャル共同工場」や、東日本大震災後の地域活性化を目指して誕生した「石巻おでん」「飯野川発サバだしラーメン」など共同開発プロジェクトにも積極的に取り組んでいます。
山徳平塚水産の扱う水産品の90%以上は、石巻の豊かな海から水揚げされたものです。上質なサバやサンマ、イワシがその代表です。同社の看板商品の数々は、子どもやお年寄りでも食べやすいように骨や魚の臭みを取り除く工夫が施されており、一晩かけて漬け込んだ後、じっくりと煮込んで骨まで柔らかく風味豊かな味わいに仕上げられています。また、最先端のレトルト技術を導入し、保存料を使わずに長期間の鮮度維持を実現しています。
伝統と革新、そして海への深い敬意を大切にしながら、山徳平塚水産は石巻の海の恵みを、日本全国、さらには世界の食卓へと届け続けています。
食欲をそそる石巻のサバ
石巻のサバは、日本でも有数の漁場である三陸沖の冷たく栄養豊かな海域で育まれ、その鮮度の高さが自慢。冷涼な気候が、魚の濃厚な旨みと引き締まった身質を生み出し、地元の熟練した加工技術で魚本来の旨みを生かした、上品でバランスの取れた味わいに仕上げられます。地元では、その風味を存分に味わうために温かいおかずとしてよく食べられていますが、ご飯に混ぜたり、温かいだし汁に入れていただくなど、より満足感のある一品として堪能することもできます。
山徳平塚水産のコラボレーションと革新の精神を象徴している取り組みが『石巻の味』プロジェクト。2011年の東日本大震災後に、地域の学校、産業界、コミュニティが一丸となって商品を開発しています。その一つである飯野川サバだしラーメンは、石巻の伝統的な風味を大切にしながら、地域の復興と持続可能性、地元の食文化の再生に貢献しています。
生姜や味噌を使った海の幸から、こだわりのラーメンまで。山徳平塚水産のオンラインショップには、旅人の味覚を満たす、多彩な味わいが揃っています。
格別なおでんを堪能する
大根、ゆで卵、練り物、こんにゃくなどの具材を、ほんのりとした醤油味のだしでじっくり煮込む、おでん。冬にコンビニでおでんが煮込まれているのを見ると、つい食べたくなるもの。やさしい香りと口の中でほろりとほどける食感が、冷えた体と心を温めてくれます。
山徳平塚水産では、この伝統料理を「絆おでん」として新たに昇華させました。東日本大震災後、人と人とのつながりを大切にしたいという想いから生まれたもので、「絆」という漢字は2011年の「今年の漢字」にも選ばれ、困難な時代における人々の結びつきの象徴となりました。
絆おでんは、地元の食材を中心に使用し、ゆで卵ややわらかな大根、手結び昆布、こんにゃくなど、具材を厳選。さらに、豊かな三陸の海で獲られて加工された焼きちくわが、石巻ならではの海の風味を添えています。かつお節と昆布から丁寧に取っただしは、化学調味料や保存料を一切使用せず、石巻の海の恵みと風土の魅力をそのまま味わうことができます。
もう一つの人気商品が、宮城名物の牛たんを使った「牛たんつくねのおでん」です。ひと口ごとに、あたたかさと奥深い旨み、そして石巻に受け継がれるものづくりの精神を感じることができます。
宮城・石巻の近隣の観光スポット
石巻の絶品海鮮料理にすっかり魅了されたところで、この地域の魅力的な観光スポットを巡ってみましょう。
・石ノ森萬画館
旧北上川の中州に建つ、石ノ森萬画館。夕日に照らされるドーム型のユニークな建物は、入館前から強いインパクトを与えます。2001年に開館した同館は「マンガの王様」と称される漫画家・作家 石ノ森章太郎の功績を記念する施設です。石ノ森章太郎は生涯で12万8,000ページ以上・770作品・500冊以上を発表し、「最も多くの漫画を発表した作家」としてギネス世界記録にも認定されています。
代表作には『サイボーグ009』、 『佐武と市捕物控』、そして現在もシリーズ が続く人気作品『仮面ライダー』などがあります。本館では、こうした数々の名作の魅力を余すことなく紹介しており、想像以上に充実した展示でその世界観を存分に楽しむことができます。
石ノ森萬画館は円形の構造を活かした設計により、外観からは想像できないほど広がりのある空間となっています。印象的なロビーやミュージアムショップから上階へと進むと、石ノ森章太郎の生涯と創作の歩みをたどる展示が続き、多くの作品を生み出した自宅を再現した精巧な模型も見ることができます。さらに上階にはシアタールームがあり、ここでしか鑑賞できない短編映像作品が一日を通して上映されています。
そこから緩やかな曲線に沿って進むと、石ノ森章太郎の長い創作活動を彩る、魅力あふれる展示の数々に出会えます。時代とともに進化してきた『仮面ライダー』の世界を振り返り、展示されたホテルのフロントベルを鳴らしたり、人気作品『人造人間キカイダー』の誕生の瞬間を再現した展示を見学したりと、作品の世界観を体感しながら楽しむことができます。
長年のファンはもちろん、初めてその世界に触れる方でも、石ノ森萬画館はきっと心を惹きつけ、想像力をかき立ててくれるスポットです。
らせん状の館内の最上階には、マンガ家やマンガ愛好家の未来を育む空間が広がっています。左手には、開館を記念して描かれた人気漫画家たちの作品が並ぶアートウォールがあり、作画やアニメーションの制作・編集の仕組みを学ぶこともできます。また、6,000冊以上の蔵書を誇るライブラリーでは、マンガや関連書籍を自由に読むことができます。
右手には、石ノ森章太郎のSF短編作品の名前にちなんだ「BLUE ZONE」カフェがあります。宇宙船のコックピットをイメージした近未来的な空間で、日和山や旧北上川の景色を眺めながら、作品の世界観を表現した料理やドリンクとともに、ゆったりとしたひとときを過ごせます。
石ノ森萬画館は、徒歩でも気軽に訪れることができるアクセスの良さも魅力です。石巻駅から歩いてわずか12分で、石ノ森章太郎の世界観を体感できるミュージアムに到着。そして、次のランチスポットへも、そこから徒歩6分で向かうことができます。
・いしのまき元気いちば
いしのまき元気いちばは三陸地域、特に東日本大震災からの復興を続ける地域を支えることを目的としています。風情ある景観に囲まれた館内には、旬の魚介類をはじめ、地元の農産物、地域ならではの特産品が豊富に揃っています。友人や家族、あるいは自分へのお土産選びにもぴったりで、山徳平塚水産の商品も購入できます。
すぐに地元の味を楽しみたい方や、川辺の景色を眺めながら食事を楽しみたい方は、ぜひ2階のフードコートへ足を運んでみてください。
ここでは川沿いの席で、石巻ならではの味覚と海の幸を存分に味わうことができます。山徳平塚水産のさばの切り身を贅沢にのせた「さばだしラーメン」や、写真の「石巻元気御膳」など、季節ごとに内容が変わる多彩なメニューが揃っています。その時季の水揚げや収穫によって内容は異なりますが、地域の新鮮な魚介や旬の野菜、ふっくらと炊き上げたご飯が、丁寧な技とこだわりによって美しく仕立てられ、石巻の豊かな食文化を存分に味わうことができます。
木のぬくもりに包まれた開放的な館内のダイニングでくつろぐのはもちろん、屋外テラスで石巻のやさしい風を感じ、美しい緑を眺めながら過ごすのもおすすめ。ひと口ごとに、まだ知られていない地域を訪ねる旅の魅力を、きっと実感できるはずです。
いしのまき元気いちばへは、石巻駅から徒歩わずか15分でアクセスできます。ぜひ、夕暮れ前に訪れてみてください。目の前を流れる川や対岸の石ノ森萬画館が、どこか懐かしい黄金色の光に包まれる、ノスタルジックな情景を楽しむことができます。
・みやぎ東日本大震災津波伝承館
石巻には、「みやぎ東日本大震災津波伝承館」もあり、2011年の東日本大震災と津波の被害、そしてその後の歩みを伝えています。マグニチュード9.0の地震とそれに続く津波により、19,782人もの尊い命が失われました。そのうち半数以上が宮城県内であり、なかでも石巻は特に大きな被害を受けた地域の一つです。
みやぎ東日本大震災津波伝承館は、洗練された現代的なデザインでありながら、その建築そのものが震災の記憶を静かに語りかけています。建物の高さは約6.9メートルで、これは津波が石巻のまちを襲った際の到達した高さ。その空間は、震災の現実と教訓を訪れる人々に深く伝えています。
館内は比較的コンパクトながら、震災当日の出来事や教訓、さらには日本や世界各地で起きた災害の記録などを通して、訪れた人に強いインパクトと深い学びをもたらします。また、展示は複数の言語にも対応しています。
館内では、地震や津波に関する情報を通して自然の威力を知り、被災者の証言に耳を傾け、未来への教訓を学ぶことができます。また、震災を実際に体験した人々の視点で描かれたドキュメンタリー映像は、震災の記憶をより深く心に刻みます。
言語や展示方法を問わず、この伝承館はあの日の出来事を、誰にとっても理解しやすく、そして心に深く響くかたちで伝えています。
2011年の東日本大震災については、世界中で報道され、多くの人がその出来事を知っているかもしれません。しかし、みやぎ東日本大震災津波伝承館を実際に訪れることで、その記憶はより深い実感を伴って心に迫ってきます。かつて住宅が立ち並び、人々の暮らしが営まれていた場所が、今は草地として広がる風景。その中を歩くと、あの日の出来事と、その後のことを深く感じ取ることができます。
石巻駅から、みやぎ東日本大震災津波伝承館までは徒歩でおよそ35分。レンタカーを利用し、施設の無料駐車場を利用するのがおすすめです。
宮城県で思い出づくり
宮城県を代表する港町・石巻で過ごす、豊かな自然と新鮮で上質な海の幸に囲まれた、ゆったりとした時間。この地域に息づく、思いやりと受け継がれてきた強さを体現する山徳平塚水産の商品は、さばを余すことなく活かしたラーメンや、丁寧に仕立てられたおでんなど、心と体をあたためる味わいばかりです。そうした一品一品が、石巻の伝統を守りながら、新たな食文化として次の世代に受け継がれていきます。
豊かな海がもたらす景色や香り、そして海の幸の味わいに、さらに深く触れるために。ぜひ、東北の旅へ出かけてみませんか。