


UMIUMA JOURNAL
波崎から“小さな幸せ”を届ける缶詰を。
缶詰事業と冷凍事業を持つ強み。
銚子漁港、波崎漁港のいずれからも車で10分ほどの位置に本社工場を構える、株式会社髙木商店。同社は昭和初期に創業し、当初はみりん干しの加工や、漁船の操業、魚粉と呼ばれる飼料などを製造していました。1956年には冷凍部門を立ち上げ、翌年、法人を設立。1961年には、大洋漁業株式会社(現マルハニチロ)株式会社の協力工場として、缶詰を手掛けるように。現在は、自社製品を含むサバ、イワシ、サンマなどの缶詰を製造しています。また、冷凍部門では加工用原料、養殖飼料向けの冷凍品などを製造しています。
「当社の特徴は缶詰事業と冷凍事業を同時に行えることです。この2つを併せ持っている会社は珍しいと思います」と話すのは、6代目で代表取締役社長の髙木貴史さん。「たとえば同じサバを仕入れても、大型、中型のサバは自社缶詰の原料向けに、一方小型のサバは、冷凍して輸出向けおよび養殖餌料向けと分けることができます。また、市場の買参権を持っているため柔軟な買付が可能です。つまり、大型と小型が混ざっていたりしても、当社は選別してほかの用途に回せるため、水揚げされた魚の大きさ、種類にこだわらず、欲しい魚の仕入れができるんです」。


2007年からはOEMで培った技術をもとに、髙木商店ブランドの缶詰の製造を開始。髙木さんは、髙木商店入社前に食品会社で営業経験があったことから、ブランド商品の立ち上げを率先して行いました。「銚子地区の営業で外回りをすると、弊社の商品はどの会社よりも多く並んでいるのですが、『髙木商店』という名前は当然出ていませんでした。せっかく良い商品を作っているのに、もったいないなと思っていたのです。また、より原料の味わいを活かした独自性の高い商品が作れるのではと考え、OEMの発注先と競合しないポジションで自社ブランド商品を開発しました」。


髙木さんがそう語る髙木商店ブランドの商品には、漁港に近い本社工場の立地や急な買付にも対応できる即応性、優れた技術が活かされているものばかり。たとえば人気の「朝獲れ」シリーズ(※)は、その日に仕入れた商品をその日のうちに加工、缶詰にするというもの。新鮮な魚のおいしさを堪能することができます。
※現在の取扱商品については、問い合わせ先へご連絡ください。
培った技術を活かしながら、柔軟に。
2011年の震災時には、同社が建つ茨城県神栖市でも大きな揺れがあり凍結庫や倉庫が破損、事務所の壁もはがれるなどの被害が発生。水道管も破裂してしまったといいますが、長年付き合いのあった銚子の醤油業者から分けていただいた水をタンクローリーでピストン輸送して、震災3日後から缶詰製造を再開、東北地方を中心に全国へ出荷したそうです。「支援物資として缶詰が欲しいというご要望がたくさんあり、『困っている方の助けになれば』『おいしい缶詰で少しでも気を紛らわしてもらえたら』という思いで缶詰づくりを急ぎました」。

髙木商店では、魚へのこだわりがより良い商品となるかどうかの決め手だと考え、買付は人任せにせずに担当者が水揚げされた魚の目利きを自分で行い、気に入った魚を入札で落札しています。しかし、近年は原料となる魚の確保が困難になっています。髙木商店ブランドの看板商品だったサバの缶詰も、一時生産ができない状態になりました。
「たとえば昨年1年間のサバの銚子漁港の水揚げは7,000t台でしたが、これは以前であれば1日で獲れてしまう量です」と髙木さんは話します。「これまで髙木商店ブランドとして自社製品は波崎漁港や銚子漁港の原料にこだわってきました。しかし、これまでの技術や商品づくりへの思いは引き継ぎながら、良い原料であれば産地にこだわらずに柔軟に使っていくことにました」。

2024年の春からは一部の缶詰にQRコードを掲載、髙木商店のHPで産地などが確認できるようにしました。原料の目利きと商品力に自信があるからこその仕掛けです。「別の産地の缶詰をただ出すだけでは面白くないですし、そういった情報もオープンにした方がお客さんも安心して召し上がれるのではと考えました」。
また、缶詰の魅力を広めるための取り組みとしてWebサイトやSNSでの情報発信を強化。宣伝・販売担当の社員が缶詰を使ったオリジナルレシピを投稿し、人気を博しています。
「これからも弊社の缶詰のおいしさで、“小さな幸せ”を感じてもらえたら嬉しいですね」と髙木さん。会社の強みや商品づくりへの姿勢はそのままに、新しい取り組みに挑戦し続けていきます。


COMPANY INFO 今回のつくり手さんの会社
